モノフォニックス 1

モノラルを楽しむ

 

モノフォニックスが、最近見直されています。ステレオフォニックス以前の音の再生技術で、詳しくは次回以降技術的な内容に触れてみたいと思っています。注目され始めたきっかけは、やはりビートルズのモノラルボックスでしょう。ビートルズの時代は、丁度、モノラルからステレオへの移行期で、ステレオが一般に普及していく時代でもありました。ビートルズはその当時、モノラルを基本にミキシングを行っていたこともあって、モノラル盤とステレオ盤では大きく印象が異なるものとなり、ファンの間で高価なコレクターズアイテムとなっていました。ですが、モノラルの見直しをきっかけに、60年代のボブ・ディランやドアーズ、ジャズだとマイルス・デイビスやジョン・コルトレーンなど、さまざまなジャンルのアーティストが次々に復刻盤としてCDやレコードをリリースし、入手しやすくなっています。

 

Apple Musicで試聴することができる音源です。

 

 

 

 

 

モノラルレコードやCDは、当時の音を忠実に再現したものから、現在の技術を用いたリマスターによるものまでそれぞれの特徴があります。まず、当時の音を忠実に再現したレコードについては、完全なレプリカのため音の解像度は低いですが、正に“当時の音”として聴くことができます。新たに手を加えることをしていない複製品としてノスタルジックさを味わうにはとても良いと思います。

 

 

もう一方のリマスターCDやレコードは、高音質で音の解像度がとても高い傾向があります。レプリカレコードとリマスターCD・レコードともにどちらも音がモノラル(一つのスピーカーからの再生)のため中央に塊として定位し、歌の迫力はモノラルならではの空間表現となります。当時のオーディオ機器やラジオで立ち現れる音として考えると、その音像の再現性は、マルチチャンネル再生(サウンド)が当たり前の現在でも参考になる部分があります。リマスターレコードでは、モノラルの奥行きが表現されており、その表現はスピーカーが一つで済む利点と共に、ステレオ以外の音響表現として何かヒントがありそうです。この辺りのモノラル音響表現については、今後色々と実験したいと考えています。リマスターされたモノラルサウンドの印象としては、違和感はあまりなく十分楽しむことができます。ここまでは、マルチトラックで録音しモノラルにミキシングされた音源について触れてきました。

 

 

 

 

 

Decca Tree

CDジャケットの写真中央が「Decca Tree」と呼ばれるマイクセッティング

次は、ガラッとジャンルを変えてクラッシックのDeccaレーベルの参考にしたいと思います。DeccaレーベルのクラッシックはDecca treeと呼ばれる3本のマイク(中央と残り二本が左右に振り分けらている)ワンポイントのマイキングセッティングを使って録音されてます。この録音の方法では、中央の定位をシッカリと保ちつつ周囲の音空間を表現するのにとても優れたマイクセッティングとしてこれまでとてもよく用いられています。また、その当時Deccaは、独自の高音質に録音ができる技術を、潜水艇を音で識別するための軍事技術を応用して特許申請を取得しています。その技術は、Decca ffrr (Full Frequency Range Recording、全周波数帯域録音)人間の可聴周波数帯域をカバーすることができるものでした。現在まで高音質で状態で残されていることから、当時の音を知る上でとても興味深い音源です。Deccaのクラッシック音源を聴くと周囲の奥行きが音空間として表現されていることがわかります

 

 

1951年のffrrよるモノラル録音(参考:CD The History Of Decca Sound 1929-1998より)

 

 

デッカ・サウンド~モノ・イヤーズ
慌ただしく曲が移り変わっていきますが、音質の参考になります。

 

 

これまでモノラル録音について書いてきました。モノラル盤のレプリカレコードやリマスターレコードは、現状、新品のレコードが高額になっている傾向があるため、まずは、Apple Musicで検索しするか、下記の辺りの復刻のリマスターCDが手頃な価格で購入することができますのでオススメです。

 

グレン・グールド バッハ:ゴールドベルク変奏曲(55年モノラル録音)  /  Amazon

 

ジョン・コルトレーン GIANT STEPS  /  Amazon

 

ジョン・コルトレーン ブルートレイン  /  Amazon

 

モノフォニックス 2では、実際に高音質でのモノラル録音したフィードレコーディングからのサンプル音源から、奥行きだけをプラスしたスピーカーを実際に制作して音響表現の実験をしてみたいと思います。

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  • 2021年6月13日