音を操作するためのツールとして、このサイトでは度々使っていきたいと思っている「PureData」を紹介します。PureDataは、サンプラーやシンセサイザー、エフェクターをはじめ、音声解析やサウンドとLEDを連動したインスタレーションシステムなど、映像と音響に関するものだったらなんでも作れる(?)強力なソフトウェアです。自分に必要な機能を実現するためのプログラミングは、ビジュアル・プログラミング言語と呼ばれるもので、パソコンの画面上で「オブジェクト」と呼ばれる「箱」を「パッチコード」と呼ばれる「線」でつないでプログラミングします。PureDataはフリーソフトウェアのため、誰でも使用することが可能です。
下記の動画を見ていただくとPureDataの概要がわかると思います。
Pure Data Japan 1st Session – 1 松村誠一郎 Pd基礎レクチャー
Pure Data Japan 1st Session – 2 美山千香士 音響合成レクチャー
PureDataに触れるようになったのは、大学時代に空間演出に使うことができるのではないかと思いプログラムを覚えたのがきっかけです。当時は、Max/MSP(PureDataの商品版でMac版のみ販売)がよく使われていました。しかし学生には、音をリアルタイムに処理できるMacとMax/MSPを揃えるのはとても高価でした。Max/MSPの情報は英語がほとんどで日本語の書籍はなく、一年に一度開催されるMaxサマースクールに参加して、チューターによるデモンストレーションで覚える時代でした。PureDataは、確か2002年頃だと思いますが、Windows95に対応していたこともあって、PureDataのコミュニティでは、オリジナルの日本語チュートリアルを公開されていて、使い方は掲示板で質問しながら覚えていきました。
PureData http://puredata.info/ は、Miller Puckette(ミラー・パケット)がオープンソースプロジェクトでSD Licenseのフリーウェアとして開発を進めています。商用版としては、David Zicarelli(デビッド・ジッカレリ)によってPureDataを拡張して作られたMax/MSPがCycling‘74から販売されました。日本では、MI7Japan https://www.mi7.co.jp/products/cycling74/から販売されています。PureDataは、Max/MSPより使用できるオブジェクトが少ない(個人使用では十分な機能ですが、パッケージを追加することでさらなる機能強化が可能)のと、Max/MSPに比べると映像が弱いところがあります。Max/MSPは、映像にJitterと呼ばれる強力なパッケージが付属しています。PureDataの場合は、GEMという画像処理パッケージを使うことで映像を扱うことが可能になります。
PureDataのパッチはテキストデータのため、作品を軽量で配布することができます。
2013年に行われた、Pure Data Japan 1st Sessionのイベントの内容が動画で公開されています。
https://vimeo.com/puredatajapan
Pd Recipe Book -Pure Dataではじめるサウンドプログラミング
この書籍は、チュートリアルベースの初めてPuredataに触れる人向けの書籍です。「初めて」と書きましたが、内容はとても充実していて、パッチの考え方や作り方は上級者でも参考になるところがたくさんあります。内容は、リズムマシーンやシンセサイザーをステップバイステップで作成していくので分かりやすいです。初学者の場合、細かな内容から入るより、興味のある内容のチュートリアルから動かしてみることがPure Dataを使えるようになる上でとても重要だと考えます。一からパッチを組むより、問題なく動作するパッチの動きを理解して制作し、そのパッチを改造して自分の考えている機能や作品に近づけていくことが重要な作業で、技術の習得に最も近道でもあります。
Max/MSPだったら「2061:Maxオデッセイ」、PureDataだったら「PureDataチュートリアル・リファレンス」が、「2061:Maxオデッセイ」に代わる書籍といえるでしょう。もはや説明は不要だと思いますが、必見の一冊です。音の基本的な操作から楽器の制作、Arduinoとの連携など、全体的に網羅した内容の一冊になっています。特にリファレンスについての解説は、使用例に記載されているので、作品制作の上で、無くてはならない書籍です。
電脳Arduinoでちょっと未来を作る(マイコンと電子工作 No.1)
電子工作にも興味がある方はこちらの書籍から入るのがいいかもしれません。Arduinoの基本的な使い方から応用まで、さらにGEMやPduinoを使った制作例が丁寧な解説で載っているので、制作のヒントとして参考になると思います。価格も比較的安く、一冊持っていて損はない書籍です。
サイバーキッチンミュージック(番外書籍)
この本の発行は90年代のため書籍としての情報は古いものですが、その当時のVisionやPerformerでのDTM音楽制作とは違い、サンプリングメインのサウンド作り(MaxやMが取り上げられている)の方法が載っています。打ち込みについては触れておらず、どちらかと言えば現代音楽に近い思考の内容です。各章のレシピも興味深く、カール・ストーンへ弟子入りした時のエピソードなど、Yuko Nexus6のコミカルな文体に引き込まれてしまいます。音のサンプリングが個人でできるようになったApple Macintoshの音楽制作についての懐かさが伝わり、読んでいてとても楽しい一冊です。古本でも手に入りやすいので検索してみてください。
Yuko Nexus6
PureDataチュートリアル
PureDataを使い始めたばかりの時は、sendやreceiveオブジェクトなどの使い方に戸惑うことがあると思います。感覚的に分からない部分は、YouTubeの「PureDataチュートリアル」を参考にすると分かりやすいと思います。PureDataのhelpに沿っているのでとても親切です。
※Pd-extended(拡張機能が含まれたPureData)をメインに解説していますが、Pd-extendedは現在開発が停止されているようです。
GEMチュートリアル
日本のPure Dataユーザのためのフォーラム
美山千香士(Pure Data -チュートリアル&リファレンス)と松村誠一郎(Pd Recipe Book -Pure Dataではじめるサウンドプログラミング)の共同で運営されているPure Dataの情報サイトです。PD関連のイベントやトラブル情報、日本語ヘルプパッチについてなど充実した内容となっています。
サウンド&ソフトウェアアート 2012/13
・Sound and Software Art Workshop
多摩美術大学情報芸術コースの2年生を対象にしたPdの授業資料がまとめられています。美大向けに書かれていますので分かりやすいです。また、SSAW13「第3回:Jitter・GEM による映像表現」を見ていただけると、Max/MspとPD、それぞれの映像についての扱い方の違いなどがわかると思います。また、SSAW12「PdとArduinoの連携 1 – Pduinoをつかってみる」「PdとArduinoの連携 2 – Pduinoで音響合成」はArduinoを使ったセンシングについて分かりやすく解説しています。
・SSAW13「第3回:Jitter・GEM による映像表現」