JR総武線 高円寺駅から7〜8分ほど歩いた小さな路地を入ったところにある、tata boolshop / grlleryで大田高充氏の個展「Bell the Cat」が開催されていました。5月14日に大田さんが在廊との事で、普段、京都を中心に発表や活動をされていることもあり、大田さんが在廊されている日に東京で直接お話を伺いに行ってきました。
大田氏は、「フィールド•レコーディング入門」のブックデザインを手掛けているグラフィックデザイナー兼サウンドアーティストであり、これまで京都 両足院で開催された「ほどける耳」などのサウンドイベントを主催したりと多才に活動されています。
また、これまでにイタリアのレーベル、901editionsやtsss tapes、ニューヨークのレーベルwinds measure recordings、そして日本のVLZ PRODUKTなどのレコードレーベルからカセットテープやCDで音源がリリースされています。
tata boolshop / grlleryの店内には書籍が並んだ棚の間にハシゴがあり、そこを上がった2階がギャラリーとなっています。ハシゴをのぼってみるとモーター音とともに、ジリジリ、カラカラといったノイズが聴こえてきます。3台の装置には、回転しているモーター
に結束バンドで円筒アルミケースが取り付けられ、それらがランダムに再生されていて、ギャラリーに心地いい軽い音色が響いていました。
大田氏の説明によるとそのアルミ缶の中には磁気テープと磁石、そして「秘密の何か」が入っているとのことです。そのアルミ缶を振ることでまっさらな磁気テープに音が刻み込まれる仕組みになっていて、その缶を開いて再生すると会場に流れているノイズに近い音が再生されるのだそう。「簡単で誰でも思いつく仕組みなんですよ」と仰っていましたが、このような形態の作品はこれまでほとんど見たことがなく、そのシンプルな構造に魅了されてしまいました。そして購入したのがマルチプルの作品。アルミ缶とその中の磁気テープを再生するためのカセットテープが付属されており、カセットテープはループ再生できるように改造されています。
ギャラリー正面にズラリと並べられたアルミ缶は、大田氏が歩きながら日常生活で共に行動したことで磁気テープに刻み込まれています。どれも同一のものは存在しません。果たしてこれはなんであろうか…、音具なのか…、大田氏はこんなことを語っています。
「再生していたテープのノイズは音具を私が1ヶ月持ち歩いて音具内のテープに記録した音を再生したものでした。テープループの長さは約4秒で、その中に私の1ヶ月の時間が収まっています。通常、テープは録音時間=再生時間の線的な時間なのですが円環にしたテープに音具の磁石で直接磁化(録音)したことで通常のタイムラインとは違う時間の流れが生まれていました。例えるなら映画『メッセージ』(原作『あなたの人生の物語』)
の地球外生命体の時間感覚に少し似ているかもしれません。この体験を共有できればと思いマルチプルとして展開してみました。」
「Bell the Cat」は、僕にとって不思議な魅力を放っていた作品でした。
大田氏によるブックデザイン「フィールド•レコーディング入門」
これまで発表された音源は、soundcloudで聴くことができます。
>> SoundCloud
Hodokeru Mimi 901editions
Oto to Secchi tsss tapes
three relations among the flock
From here to everywhere
展示タイトル : 「Bell the Cat」
会期 : 2022年5月4日(水・祝) – 5月22日(日)
営業時間 : 13:00-21:00
休廊日 : 月・火・水曜日
入場無料
お問合せ : info@tata-books.com
1980年生まれ。土地・環境・気候で発生する固有の自然現象に注目したインスタレーションを制作。パフォーマンスではファウンドオブジェクトで音を生成し、体感した環境音の再構成を試みる。
主な参加展覧会・イベントに「野外展示|音羽川百景 2020」音羽川砂防ダム(京都,2020)、「ほどける耳」 両足院(京都,2017)、「土祭2015」円道寺池(栃木,2015)など。実験音楽レーベル senufo edition、 wind measure recordings などより記録音源をリリース・出版。